DIALOGUE|対話

CORRESPONDANCES AHUMの香りは、2人の専門家の出会いをきっかけに誕生しました。
原料となる鉱物の選定を、WEBメディア「占い師と弟」の占い師であるお姉さんに。蒸留と調香を、調香師の沙里さんにご協力いただきました。それぞれ異なる分野で活躍している2人の感覚は運命的とも言えるほど一致しており、そこから鉱物のエネルギーを最大限に引き出したメディテーションスプレーが完成しました。

2人が「実験するように楽しんでほしい」と語る香り……その真意とは。鉱物から香りが生まれるまでの過程も含め、対談でじっくりと語っていただきました。

■共通して抱く、“ 翻訳者 ”の感覚
──まったく異なるフィールドにいらっしゃるお二人ですが、普段はどのような活動をしているか、それぞれ教えてください。

 私は「占い師と弟」、通称「URAOTO」というWebサイトを実の弟と一緒に運営しています。本来は占い師ではなく霊能師なのですが、多くの方に親しみやすくありたいという思いから「占い師」という表現を選びました。霊視ができない弟との姉弟の違いを生かして、視えない世界の話を科学的な分析も交えながら紹介しています。さまざまな情報が混在する世の中ですが、霊視を通して、私が感じている世界をお伝えすることで少しでも困っている方の力になれたらと思っています。

──その「URAOTO」では天然石や鉱物の販売をされていますよね。今回のCORRESPONDANCES AHUMでもお姉さんはベースとなる鉱物の選定を担当されていますが、そもそもなぜ鉱物に興味を持たれたのでしょう?

 小さな頃から自然物にエネルギーを感じていて、強いエネルギーを持つ石や木の枝などを集めていたんです。例えば背中の痛い部分をそういうもので撫でるだけで、痛みが取れたりすることを感じ取っていました。そうしたエネルギーを持つものを誰かに渡すということがしたくて、天然石・鉱物を中心に「URAOTO」で販売を始めました。弟と2人で国内外の市場や鉱山で仕入れています。購入していただいた方からは「石から音が聞こえた」「石が熱くなってます」というお声をいただいたりしますが、それは全部その石が宿しているエネルギーなんですよね。

──なるほど。視えない方でも感じられるほどのエネルギーが石には込められているんですね。一方、沙里さんは調香師のお仕事をされているということですが。

沙里 はい。「かほりとともに、」という屋号で調香や蒸留をしています。ジュエリーブランドや化粧品メーカーなど外部から発注を受けて香りを作ることと、自分のブランドを並行してやっています。今は埼玉で暮らしつつ、長期の休みや週末には軽井沢のアトリエで蒸留やブレンドをしています。軽井沢は標高1000mくらいなんですが、庭にたくさん植物があったり、水質がヨーロッパに近いんですよ。水によって香りが左右されるので、蒸留をするときも軟水と硬水を分けて使用しています。



──「蒸留」と聞くと一般的にはお酒などを思い浮かべる方が多いと思いますし、私も最初にブランドの説明を聞いた時は「石って蒸留できるの?」と驚きました。沙里さんはもともと石の蒸留も行っていたんですか?

沙里 そうですね。2014年にペルーに行った時、石からとにかくいろんな香りがしていることを感じました。そのときに「これは蒸留してみたい」と思い、「Sign」というタイトルで石のパフュームを作り始めました。

 私は石にはそれぞれ香りがあるということを知っていたので、「石の香りを空間に撒いて自分を癒すというライフスタイルの提案ができないかな」とずっと考えていたんです。なので今回「石から香水を作れる、沙里さんという方がいる」というお話を聞いて、すぐに「つないでください!」とお願いしました。石の香りを液体に転写していくということができる人が実在するとは思っていなかったので、運命の出会いでしたね。

沙里 お姉さんとは、初めてお会いした時から同じ感覚でお話ができて嬉しかったです。私は子供の頃、城下町に住んでいたんですけど、公園にある石がそれぞれどういうメッセージを発しているかということを書いたエネルギーマップを作っていて。それに付き合ってくれる友達が当時はいませんでしたが(笑)、そうした感覚も共有できる感じがありました。

 私と沙里さんが話していると盛り上がるポイントが同じで、周りは目が点になっていますよね(笑)。

沙里 そうですね(笑)。私の家族は音楽をそれぞれやっていて、私自身も「宇宙ってこういう音かな」「星の響きってこんな感じかな」という想像を音にして、その響きに触れることが、ずっと自分にとって癒しだったんです。10代後半で香りの世界に出会いましたが、調香師になりたかったというよりは、とにかくその響きの中にいたかった。触れた植物や石、苔など、すべてのものから感じる記憶みたいなものを抽出して人に渡すということを、翻訳者のような感覚でやり始めたので、お姉さんとは近しい部分が多いのかなと感じています。最初に打ち合わせをしたとき、「石から香りを作ることが難しければ、それぞれの石をイメージした香りを作る選択肢も?」という案もブランド側からはあったんですが、お姉さんとは「石そのものにあまりにも香りがあるから、それを抽出できたら面白いですよね」と意気投合しました。
■石は、未来や過去からやってきた香りがする
──原料となる石からメディテーションスプレー、メディテーションオイルが作られるまでは、どのような過程を辿っているのでしょうか。

 まず私が石を選んで、「この石からはたぶんいい香りが出ます」と沙里さんに送るところから始まりました。すごくいいエネルギーを宿した石だったので、蒸留したらそのエネルギーが空間に粒のように広がって、香りを嗅ぐ人の心が落ち着くはず、と確信していましたね。そして沙里さんが石と対話をしてくださって、ラボで少しずつ蒸留していく、という流れで作っていきました。

──昨今の状況だとなかなか海外への渡航は難しいと思いますが、今回使用されたカイヤナイトという石はどのように入手したものですか?

 ちょうどコロナ禍になる直前、2020年の初頭に海外へ鉱物の仕入れに行っていまして、そのときに手に入れていたものですね。鉱山から巨大な鉱物がたくさん運ばれてくる会場で、一番エネルギーが出ていたものを塊でいくつか選びました。ゴツゴツとしていてとても重いので、日本に持って帰ってくるのはなかなか大変でした(笑)。



沙里 植物でもなんでも、蒸留にはそれぞれ適したタイミングがあるんです。お花でもつぼみのほうがいいものもあれば、逆に咲いた状態がいいものもあったり。お姉さんからいろんな石を送っていただいて、「これは3ヶ月くらいかかりそう」「こっちはちょっと頑固かも?」とか、いろんな石がいて面白かったのですが、このカイヤナイトは、最初から道しるべをスッと示してくれるような印象がありました。石を蒸留するときはいろんな方法を試していますが、このカイヤナイトの場合は大きく2種類ほど試しました。まず1週間水に浸けておいたり、アルコールに漬けたものを水蒸気蒸留機にかけたり。そうして香りの成分を抽出していきました。

──蒸留してみて、どんな香りが生まれましたか?

沙里 石の香りってすごく面白くて、石そのものの香りのほかに、違う層で未来や過去からやってきたような香りがするんです。今回のカイヤナイトを抽出したときは、意外な香りが取れたというよりは、「そうそう、これ知ってる」という感覚を覚えました。まさに出会いたかった香り、というか。

 「URAOTO」の会員制コミュニティの中で、この香りのサンプルを配って会員の方々に嗅いでもらったんです。そうしたら「過去の香りがする」とか、「これまで経験したことのない時間軸の中に自分がいる感じがする」という感想が多くて。「最初は『懐かしい』と感じて、数時間後に嗅いだらいつかの未来に遭遇するような香りがする」というような表現をされた方も何人もいらっしゃいましたね。驚きました。

沙里 蒸留している時、私自身は無に近い状態でした。時を超越して、自分が媒介物……パイプのようなものになったような感覚というか。あまり記憶がないんです。そしてできあがった香りにハッとさせられる、その連続でしたね。
■実験を楽しんでほしい
──今回はメディテーションスプレーとメディテーションオイル、そしてそのオイルを垂らして使用するさざれ石とのセットが用意されています。それぞれどのように使用するか、お伺いできますか?

 まずスプレーは空間に大きくシュッと散布して、その空間の中に身を投じてほしいです。瞑想するための空間でもいいですし、朝目覚めた時、夜眠る前の落ち着く空間づくりなど、お好きなタイミングでいいのですが、そうしたシーンに使っていただくイメージで作りました。そしてオイルのほうでは、液体になったカイヤナイトを別の石に垂らすことで、新たなエネルギーが生まれるという経験をしてもらいたくて。

──カイヤナイトと別の石が組み合わさることで、また異なる魅力が生まれる、と。

 はい。さざれ石は、タンザナイト(※1)、グレープアゲート、モルガナイト、ホワイトハウライト、ストロベリークオーツ、ペルーアマゾナイト、ラブラドライトの7種類があります。カイヤナイトのオイルと組み合わせることで、タンザナイトは「潜在的に持っている魂を目覚めさせ、『人として』の成長を徹底的に促していく」、モルガナイトは『自分を癒す、愛する、磨いていく、そして人にも愛や慈しみを惜しみなく伝えていける』……といったように、それぞれ異なるエネルギーが生まれるんです。さざれ石にオイルを垂らした瞬間に、「自分は何者にでもなれる」という可能性を感じたり、急にいろんな感情が涙となって流れてきてデトックスできたりと、組み合わせによって違う感覚が湧いてくると思います。


──ブランドのコンセプトにもある通り、" 心と精神の落ち着ける場所 "を与えてくれるようなアイテムなんですね。

 そうですね。香りを嗅ぐという行為は、気持ちを華やかにさせる効果もあるんですが、CORRESPONDANCES AHUMは香水のように周囲の人に香りを感じてもらうためのものというよりは、どちらかというと自分の心に溶け込ませる、自分のリラックスできる空間を作り上げていくための香りです。そして、安定して同じ香りが漂うブランドの香水などとは違って、嗅ぐ時の自分の体調やメンタルの状態、環境によって、香りが変わるんですよ。それは体験していただいた「URAOTO」の会員の方もおっしゃっていましたね。繰り返し使っていただく内に、「あのときと同じ香りだから、今日はちょっと疲れているのかな」とか、自分の状態を測るバロメーターにもなってくれると思います。なのでこれは香水のカテゴリーには当てはまらないのかもしれない……と考え、「メディテーションスプレー」「メディテーションオイル」という名称にしています。

沙里 今お姉さんがおっしゃったように、外に向けて付けるというより、内面にまとうという説明がしっくりきますね。お出汁みたいな香水……という言い方が合っているかわからないですけど(笑)、付ける方の鏡となるような、余白がすごくある香りになっているのかなと思います。今回は石をメインに、その石を引き立てるような植物もブレンドしているんですが、その配合を組み立てるときも、付けるタイミングや場所で違って感じられる香りになるといいな、というところをすごく意識しました。

 実験のように、自分や環境の変化と合わせて香りがどう変わるかを楽しんでほしいですね。

沙里 こうやってお話ししていると、私たちがすごく新しいことをやっているように思う方も多いかもしれないんですけど、何千年も前の人々はこういうやり方をしていたんじゃないかなって。「ずっと昔の時代にはこういうコミュニケーションの形があったのかもしれない」と、帰還するようなイメージを抱いて私は関わらせていただいています。教会やお寺で香木が使われてきたように、香りというものは常に祈りや心と近い部分にあったと思うんですね。今回の石の香りも、根源的な部分で、魂の触れ合う瞬間に用いられてきたように感じる瞬間がありました。昔誰かが感じていたかもしれない一瞬を体験しているような。なので、使っていただく皆さんも日々実験していただけると面白いかなと思います。

──このプロジェクトで初めて出会ったとは思えないほど波長の合うお二人が、良いチームワークで作り上げた香りということがよくわかりました。

沙里 普段は、調香していて、私自身が空(くう)になってしまうように感じることも実は多いんです。でも今回はお姉さんが石を選んでくださったことで、常に深い安心感と共同作業感があったというか、身を委ねられました。「もう少しでこの石の声が抽出できそうだけどどうしたらいいのか」と悩んだ時にも、「こういう風に話しかけたらいいんじゃないか」と親身にアドバイスをくださって。「自分1人だったらこんなふうに石と会話できないな」と思うこともすごくありましたね。

 嬉しいです。初回はカイヤナイト1種類ですが、今後は違う石の香りも準備していますし、キャンドルやお香など、いろんなアイテムを増やしていくので、楽しみにしていただけたらと思います。

※1 URAOTO-to限定販売

「占い師と弟(URAOTO)」姉 / 占い師
実の弟とともにWebメディア「占い師と弟」、通称「URAOTO」を運営。
「占い師」と呼ばれているものの、本来は「占い」ではなく「自らの能力で視える世界」を中心に鑑定を展開していくスタイルが特徴。これまで、著名人や政治家をはじめ、世界各国で約1万人以上を鑑定。
幼少期から少し人とは違う世界を視ており、自身の「視えている世界」にどういったルーツがあるのかを学ぶため、民俗学・社会学を大学院で専攻、留学を重ね知識を深める。
その後も世界各地をまわり、各国の宗教・芸術・呪術の文化に触れながら慣習行事にも参加し、新たな文化的価値や持続すべき文化継承などについて常に海外との交流を深め、情報発信を続けている。
神社仏閣やその土地の史跡などにおける知識も豊富で、アドバイザーやイベントプロデュースも手がける。






「かほりとともに、」沙里 / 調香師
IFA国際アロマセラピスト。
「記憶とこころ」をテーマに、草花や樹、鉱物や果実など、あらゆる地球の恵みからエッセンスを抽出し、風土や人、音楽や季節のうつろい、感覚と響き合う体験を、香りによって引き出すことを探求しているアーティスト。日本の伝統的な香道作法と西洋の香文化を融合させた新しい聞香を創始し、未来に繋ぐ活動も行っている。国内外での調香アトリエ多数。インスタレーションほか、空間や化粧品における香りのデザインに携わりながら、コラボレーションや体験を通じ、生への問いを重ねている。
2011.フレグランスコンテスト環境大臣賞受賞
2015.ミラノ万博博覧会にてフレグランス演出、ミラノサローネ参加等
2022.4.  skill academy @HERMES
2022.9.  組む東京にて個展開催予定

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